この街の風が孤独な心を癒していく
絶賛公開中
『G.I.ジョー: 漆黒のスネークアイズ』『クレイジー・リッチ!』ヘイリー・ゴールディング
  • 本予告
  • 30秒
激変した故郷をさまよいながら、
傷を見つめ、混沌と戯れる。
活気に溢れる現在のベトナムが照らし出すのは、
移民となった人々のその後の軌跡だ。
今日マチ子(漫画家)
爆発もなければカーチェイスもない。
超能力を誰も持たないし一人も死なない。
ワンパターンの映画に飽きているなら、
ルーツやアイデンティティをゆっくり模索する
青年の自分探しの旅にゆらりとお付き合いください。
パトリック・ハーラン(タレント)
国の歴史と戦争の記憶。
多くを語らない映画の余白の美しさが、
聞かれてこなかった人々の声をやさしく掬い出す。
ブレイディみかこ(ライター)
故郷を追われた過去への戸惑い、少数者としての息苦しさ、
自分を偽ってしまう癖、相手を搾取する傲慢さ   
人間は常に多面性を抱き生きている。
それでも、いや、だからこそ、
「自分はどこからやってきたのか」というルーツに
立ち戻ろうとするのかもしれない。
安田菜津紀(NPO法人Dialogue for People副代表/フォトジャーナリスト)
印象的な長回しや引き画に映る街並みから、
数年前に訪れたベトナムで感じた剥き出しの生命力を思い出す。
言葉ではないところで語られる戦争の影響、記憶の中の母国への郷愁。
溢れる所在ない寂しさがじんわりと心に染みた。
宇垣美里(フリーアナウンサー)
人は、それぞれ異なる過去を背負って生きている。
背負いながら、今現在を歩くしかない。
私たちがそれぞれに持つ、たくましさを知った。
武田砂鉄(ライター)
最後の最後に静かな驚きがあった。
不意に訪れたどんでん返し。
この場所で生きてきた、この場所で生きていく、
そういうことの意味を、ひっくり返すような。
望月優大(ライター)
時間の流れは一定です。
1秒、1分、1時間、1日、1年。
ただ人それぞれの生きていく中で
全く違う時間の流れを体感していく。
主人公の中で明らかに止まっていた時間の流れを
ルーツを辿りながら進めていく描写が細やかに描かれていて
時計の針の音が動いていくのが聞こえてくるような。
サイゴンの街の交通のメインになっているバイク。
このバイク動き、音が現実世界での早い時間の流れを表している。
主人公の中で変わっていく流れと、
その中でも変わらない不変的なものが交錯していくストーリーが
見ていて自分自身にももう一度
時間というのを考えさせてくれました。
副島淳(俳優/タレント)
日本で生まれ育ち、何不自由なく生活できていると、
キットが渇望するアイデンティティの確立とは無縁になる。
"私は何者なのか?"
歩を緩め、考える機会をこの映画からもらった。
部坂尚吾(スタイリスト)
そこに居るのに、まるで居ないようで。
確かにここに在るはずなのに、なかったことになっている気がする。
そういったことを何度も何度も感じ、
一体、私たちは自己の存在や時間をどう証明したらいいのか。
その問いに向き合い続けながら、
それでも人生は続いていくのだと、噛みしめる映画。
枝優花(映画監督/写真家)
ベトナムに移り住む前の私にこの映画を見せたい。
こんなにも時を巻き戻したいと思ったことはないほどに
強烈だけど、とても優しい1時間半でした。
暮らす人だけが知る誇張ないリアルなベトナムを全身で感じてください。
東洋子(ベトナム在住 編集者)
登場人物たちは多くを語らない。
彼らの内面は想像するしかない。それだけに、
ベトナムのこと、その激動の近現代史を、
次回ベトナムに旅立つまでに
きちんと勉強しなくてはと思わされた。
福井由美子(『ひとりっぷ』シリーズ著者&編集者・ひとりっP)
主人公と同じような過去を持つ監督が、
自らの人生を振り返るかのように故郷で感じた複雑な気持ちや、
今伝えたいベトナムの風景を詰め込んだ作品。
特に蓮の花が画面いっぱいに広がるシーンがとても鮮やかで美しく、
写真として一枚の作品を撮影したいと思うほど印象的でした。
サイゴンとハノイの街並みの対比や混沌とした空気感が
魅力的に映し出されていて、旅をしている気分に。
旅欲が高まる今だからこそ見たい作品!
田島知華[たじはる](トラベルフォトライター)
透明感のある美しい映像と、
静かだけれども臨場感に満ちた音に引き込まれる。
主人公の旅を追いながら、
気づけば自分もベトナムの街を歩いている気分になっていた。
片山ゆり(ライター/フォトグラファー)
騒がしいバイクの音、絡まった電線、
蒸せるほどの湿度…映像が流れた瞬間、
ベトナムを最後に旅した3年の記憶が蘇りました。
淡々とした情景描写の中にも、
人々との関わりで感情が読み取れる美しい映像。
特に鮮やかな蓮花茶のシーンが印象的でした。
詩歩(絶景プロデューサー)
人種や国籍が人のアイデンティティを決めるわけではない。
複雑なバックグラウンドを持つひとりの青年のルーツを巡る旅は、
帰属意識の呪縛から開放し、
「多様性」とは何かを静かに、力強く訴えかける。
境界線を超え、より自由に自分らしい人生への
第一歩を踏み出すその姿に大いに共感し、希望を感じる。 
立田敦子(映画ジャーナリスト)
ホテルのバルコニーで、列車の中で、道路の真ん中で。
主人公はいつも一人ぼんやりと外の世界を見つめている。
どこにも居場所を持たない彼が、やがて風景のなかに溶け込むまで。
その瞬間をじっと待ち続けるカメラの不思議な動きに、心を掴まれた。
月永理絵(編集者/映画ライター)
自分がいるべき場所と、本当に居心地のいい場所は違うもの。
アイデンティティに悩み、新しい一歩を踏み出すことを躊躇する人こそ、
この作品を観て、背負っているものをそっと降ろして。
よしひろまさみち(映画ライター)
アイデンティティの探索は「終わらない旅」そのものだ。
ホン・カウ監督は地政学、セクシュアリティ、
世代をめぐる考察を30年の歴史背景に込め、
変わりゆく都市空間の中で個の揺らぎを繊細に描き出した。
森直人(映画評論家)
祖国を離れた男の、揺らぐアイデンティティは、
彼を画面の中心に据えながらも、
広角で引き画を多用するカメラがとらえるホーチミンの街並みとの対比により、
視覚的に描写される。安易な言葉よりも、
画面が静かに語り出す。
中井圭(映画解説者)
アイデンティティの拠り所は生まれた土地にあるのか、
それとも育った土地にあるのか。
異郷かつ郷里でもある地を巡礼することで、
この命題に横たわる<時間>という不可逆的な概念が、
国の歴史と個人の歴史と共に解体されている。
松崎健夫(映画評論家)
2022年5月20日(金)よりデジタル先行レンタル順次配信決定!
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※詳しくは取扱いの配信サービスにてご確認ください。
イントロダクション
変わりゆく故郷、忘れ去った母国語、ここではないどこかへ——悩みながら今を生きる全ての人へ贈る物語。
変わりゆく故郷、忘れ去った母国語、ここではないどこかへ——悩みながら今を生きる全ての人へ贈る物語。
30年ぶりに生まれ故郷であるベトナムを訪れた主人公が、旅路の過程で自身の人生を見つめ直す——。内省的なロードムービーである本作が静謐に描くのは、そんなアイデンティティの物語に他ならない。

監督を務めたのは、『追憶と、踊りながら』(14)のホン・カウ。主人公キットの設定はカウ自身の経験に由来する。カンボジア系中国人の両親のもとに生まれ、クメール・ルージュ政権下のカンボジアから逃れて、ベトナムに渡った。その後、8歳まで同国で過ごし、ベトナム再統一後に“ボート難民”として渡英したという。「文化的アイデンティティの問題は、私が創作する上での共通したテーマです。難民として国を離れると、決して帰属意識を得られない場所で、絶え間ない苦難を味わうことになります。問題は、そのテーマをどういった形式や構造で表現するか選択することでした」とカウは語る。

そのキットを演じたのは、『クレイジー・リッチ!』(18)に起用されて以来、ハリウッドでの活躍が目覚ましいヘンリー・ゴールディング。イギリス人の父とマレーシア人の母を持つ彼にとって、キットの持つ複雑なアイデンティティは、強い共感を抱けるものだったのだろう。役柄と自身の実体験に共通点を見出している俳優は、ゴールディングだけではない。キットと淡い恋に落ちるアメリカ人ルイスを演じたパーカー・ソーヤーズの父は、ベトナム戦争で従軍しており、帰還後はPTSDに苦しんでいたという。本作の登場人物たちは自分たちの経験について言葉少なにしか語らないものの、それでもなお説得力のある物語として伝わってくるのは、監督や俳優たちが抱えるこのような事情に起因するのかもしれない。

自分とは何者か?——本作はこうした普遍的な問いを静かに投げかけながら、わかりやすい答えを用意しているわけではない。しかし、であるからこそ、観る者の心を深く刺さり、さまざまな思考へといざなう作品になっている。
ストーリー
舞台は現代のベトナム。キット(ヘンリー・ゴールディング)は、両親の遺灰を埋葬すべく、30年ぶりに祖国であるサイゴン(現ホーチミン)に足を踏み入れる。

キットは6歳のとき、家族とともにベトナム戦争後の混乱を逃れてイギリスへ渡った、“ボート難民”だ。以来、これが初めての帰郷だった。もはやベトナム語すらままならない彼は、英語が話せる従兄弟のリー(デヴィッド・トラン)の助けを借りながら、どこか大事な場所を探し始めるが、思うようには進まない。サイゴンは今やすっかり経済成長を遂げ、かつての姿は見る影もなかったからだ。そんな中、ネットで知り合ったアフリカ系アメリカ人のルイス(パーカー・ソーヤーズ)と一夜をともにするキット。ルイスの父親はベトナム戦争に従軍したという過去を持ち、そのことを隠してこの国で暮らしていた。

その後、両親の故郷ハノイへ向かったキットは、サイゴンで知り合ったアートツアーを主催する学生リン(モリー・ハリス)を訪ね、彼女の実家が営む伝統的な蓮茶の工房見学をする。それはキットの知る“古き良きベトナム”の姿にようやく触れられた時間でもあったが、リンにとっては時代遅れなものらしい。

埋葬場所探しに関しては、ハノイでも芳しい成果がなく、サイゴンに戻ったキット。そこで彼は、リーから自分たちの家族の亡命にまつわる“ある真実”を聞かされることになる——。
キャスト・スタッフ
kit
HENRY GOLDING ヘンリー・ゴールディング / キット
1987年2月5日、マレーシア生まれ。
アクション大作シリーズ『GIジョー: 漆黒のスネークアイズ』(21)の主演など、アジア人俳優としてハリウッドで大活躍中。
父はイギリス人で母はマレーシア人。7歳からイギリスで育ち、2008年、21歳の時に自身のルーツを探すためマレーシアに帰国。TVタレントや司会、モデルとしてマレーシアやシンガポールで活動。2018年『クレイジー・リッチ!』の主人公の恋人役に抜擢されスクリーンデビュー。『シンプル・フェイバー』(18)の主要キャストとして、ブレイク・ライブリーとアナ・ケンドリックと共演。ワム!の代表曲「ラスト・クリスマス」をモチーフにした『ラスト・クリスマス』(19)、ガイ・リッチー監督『ジェントルメン』(19)に出演。ダコタ・ジョンソン共演の『Persuasion(原題)』の公開がひかえている。
Lewis
PARKER SAWYERS パーカー・ソーヤーズ / ルイス
1984年5月24日生まれ。
2016年の『サウスサイドであなたと』でバラク・オバマ役として主演を務める。2012年、ビル・マーレイ主演の『Hyde Park on Hudson』でスクリーンデビュー。TVドラマや映画で活躍中。父親がベトナム戦争に海軍として従軍した経験を持つ。
Linh
MOLLY HARRIS モリー・ハリス / リン
ベトナムで生まれ、イギリスとオランダで育つ。
本作でスクリーンデビュー。2020年、ディズニーの『アルテミスと妖精の身代金』に出演。BBCドラマシリーズ『バティスト~アムステルダムに潜む闇~』、『ドクター・フー』シリーズなどに出演。
Lee
DAVID TRAN デヴィッド・トラン / リー
ベトナム生まれ。
グエン・ファン・クアン・ビン監督の『Quyên』(15)に出演。同作はベルリンの壁崩壊中のベトナム難民を描き、ベトナムのオスカーと言われるゴールデン・カイト・アワードを受賞。第20回釜山国際映画祭で上映された。
HONG KHAOU ホン・カウ / 監督・脚本
1975年10月22日、カンボジア・プノンペン生まれ。
2014年、サンダンス映画祭で上映され、撮影賞を受賞したベン・ウィショー主演の『追憶と、踊りながら』で長編映画デビュー。ベトナムで育ち、8歳の時にイギリス・ロンドンへ移住。1997年にUCA芸術大学を卒業。BBCとロイヤル・コート劇場の「50人の新進作家」に選出され、多くの企画の脚本に関わる。映画制作を学びながら、独立系映画配給会社のホームエンターテインメント部門で7年間勤務。2006年のベルリン国際映画祭で上映された『Summer』、2011年のサンダンス国際映画祭で上映された『Spring』の2本の短編作品で注目され、2013年にスクリーン・デイリー紙が選ぶ「明日のスター」に選ばれる。2014年には、英国インディペンデント映画賞の最優秀新人監督賞にノミネート。また、BAFTAロサンゼルスの注目すべき英国人の1人に選出された。
HONG KHAOU ホン・カウ / 監督・脚本
1975年10月22日、カンボジア・プノンペン生まれ。
2014年、サンダンス映画祭で上映され、撮影賞を受賞したベン・ウィショー主演の『追憶と、踊りながら』で長編映画デビュー。ベトナムで育ち、8歳の時にイギリス・ロンドンへ移住。1997年にUCA芸術大学を卒業。BBCとロイヤル・コート劇場の「50人の新進作家」に選出され、多くの企画の脚本に関わる。映画制作を学びながら、独立系映画配給会社のホームエンターテインメント部門で7年間勤務。2006年のベルリン国際映画祭で上映された『Summer』、2011年のサンダンス国際映画祭で上映された『Spring』の2本の短編作品で注目され、2013年にスクリーン・デイリー紙が選ぶ「明日のスター」に選ばれる。2014年には、英国インディペンデント映画賞の最優秀新人監督賞にノミネート。また、BAFTAロサンゼルスの注目すべき英国人の1人に選出された。